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zoom RSS 辺見庸 【自動起床装置】 睡眠クラブGU−SU−KU お薦め

<<   作成日時 : 2009/06/09 22:13   >>

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 眠りの芯のところは・・・・・・・・ちっちゃな神様が住んでいるような所なんだ


これは芥川賞受賞作品で、平成3年、辺見庸が受賞したものの一節です。

眠りが主題の小説は少ないが、それが芥川賞作品とは睡眠ファン(そんなのあるか?)としては嬉しい限り


辺見は共同通信社勤務だったから、この国際通信社の宿泊センターを舞台としたストーリーには真実味があるし
何よりも、純文学的な難解さがなくて、面白いのがいいなー。

まず、あらすじネ。

画像 主人公「僕」は国際通信社の宿泊センターで、
   「起し屋」というアルバイトをしている。(こんな仕事本当にあるんかな?)
   通信社の社員は24時間、昼夜の区別なく勤務しているので、
   センターで仮眠をとるのだが、彼らを起こすのが「起こし屋」の仕事だ。

   働きづめの男たちが、静かに行儀よく眠れるわけはなく、
   寝言・いびき・夜驚症・夢遊病と騒々しい。

   ここでは昼間は想像もつかない社員たちの夜の姿を見ることができるのだ。

   起こし屋は体に触れて起こしてはいけないことになっているので、
   テクニックを必要とする。  (どんな方法かって? それは読んでみるべし)
   先輩アルバイターの聡は、木が大好きで、
   図鑑ばかり読んでいる変わり者だが、起こしの名人である。


     僕はいつも、彼から木の薀蓄を聞かされるが、
     それには聡の「睡眠哲学」とでも言えるものが絡んでいる。

     二人が仕事に励んでいたある時、会社が突然「自動起床装置」の設置を決定する。
     聡は「起こし」が機械の手に委ねられることに憤慨する。

     しかし意外にも自動起床装置は、そのユーモラスな動きから社員の人気を得てしまったのだ。
     「起こし」の仕事は不要となり、二人はただのセンターの世話係りになってしまった。

     ある夜、社員の一人が倒れ、二人は必死で人工呼吸をほどこしながら、社員を呼び続ける。
     社員は蘇生するが、すぐ病院に連れて行かれる。

     その2日後、二人は仕事場を去った。


この小説は、あきらかに辺見が睡眠についての自らの思いを語るために書かれている。
         90年代前半、ちょうど小説が書かれた頃、日本では眠りに関心が集まり始めます。
         (残念ながら、睡眠に問題あり!と言う意味でですが。先進国としては遅いのです)

話の初めのほうにこんな文があります。

「安らかに眠り気持ちよく目覚める」 こんなあたりまえのことをかなり多くの人ができずに生きているのだ。

このかなり多くの人たちというのは通信社で24時間働く社員たちだが、
辺見は彼らの、いわば、「いびつな睡眠」を通して
グローバル化した資本主義社会が人間の自然な生き方を剥奪していることを批判していると思われます。

       *BBAK思うに、小説発表以来17年も経つのに、睡眠状況はひどくなるばかりで
        睡眠苦悩人間の存在は、もう、ありふれてしまって小説のネタにはならないでしょう。
        「安眠&爽快起床」は今や渇きが水を求めるような切なる願望です。

        研究者のデータによると、それは日本の小学生の願いだというのだから、ため息がでちゃうよー。
        
        で、時間的に睡眠がとれないのはいい方で、様々な精神的重圧から不眠症になっている人が
        4−5人に一人と言うから、ほんとにゆゆしきことなんだよー。



一方、「起こし屋」の存在は・・・人が人を強制的でなく起こすということにおいて、
辺見はアナログで自然な人間性をシンボライズし、今で言うロハスな世界を暗示します。

起こし名人、聡の語る木の薀蓄は、すべて眠りと関係し(この木の下で眠るといいとか悪いとか)
彼が木と人間の交感を信じて疑わない様が描かれます。

このあたり、辺見の言わんとするところが聡の口を借りて示されます。


       *眠りから覚醒するまでの時間はおきていて眠るまでと同じほど大変なことなんだ。
       
       *(人は)起きると眠りの世界を忘れてしまう・・・・起きて仕事をするために眠りがあると誤解するんだね

       *起きるというのは・・・木の実とか・・・果実がお腹にポンと落ちてくるとか・・・
                                       小鳥がピーチクやるとかして生じる感覚なんだ。

       *(起こすということは)すまないけど(お前は)おきなきゃならないんだ、そういって
                                                 心を込めておこす。



そんな聡の言葉を聴くうちに僕の心にも変化が現れます。
それは、僕が夜の姿でしかつきあいのない社員と昼間に接したときの感じ方です。

       *立位の(昼間の)この人に語りかけるのはインチキなことに思われるのだった。


結局、産業優先社会の主役、自動起床装置が聡たちに勝つのであるが、
そこで辺見はこう言う。
     
       *神様を恐れない人の知恵の結晶が・・・・一見、動物か植物に似た姿になることもあるんだ。
         おひとよしのこともあるんだ。・・・見た目にはファジーさ。でもやることは一律さ。


これにはドキッとしますね。
起床装置ならずとも、我々は、いつもそんなエセモノにだまされていますよね・・・。

聡は自分の負けを認めたくなかったのでしょうね。
社員の一人が倒れたとき、渾身の救命措置をとります。

二人が死の淵にある人を呼び戻すところは、眠りと死、そして起床と蘇生という関係が示されます。

結局、二人は職場を去るのですが・・・・・BBAKは想像します、その後のセンターの様子を。

ひょうきんな顔をして、実は感情のひとかけらも無い自動起床装置が

           「睡眠苦悩人間」たちを無慈悲に起こすその様を・・・・・

なんだか泥沼にはまりこんでしまった感の世界経済・・・これから、ますます人々は働かされ
「睡眠苦悩人間」が増えていくことでしょう。

だからこそ、一度この小説をを読んでみて下さい。


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コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
芥川賞にそんなのがあったんですね。早速読んでみたいと思います。
ちなみに私は最近不眠気味です。
本の虫子
2009/01/08 18:41

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